ブラッドオレンジの生産者

内容は全て2012年3月現在です

ブラッドオレンジの生産者 山内直子さん 愛媛県宇和島市

山内直子さん

果実へ注ぐ愛情、家族の健康管理と同じ

愛媛県宇和島市でかんきつ農家を営み18年目をむかえる山内直子さんは、230アールで約10種のかんきつを作る。ブラッドオレンジは、うち25アール。

穂木を接ぎ、栽培して7年。収穫は5年目で、果実は色・糖度ともに順調な仕上がりをむかえている。

山内さんの園地は、転げ落ちそうな急斜面にある。足を踏み外せば命に関わる事故にもつながりかねない。
山あいで日当たりもけして良くはない。なぜこんな場所で作るのか?
「苦手な土地に好きな品種を作ったら足が向くと思ったのよ」
山内さんは笑顔で話す。

旅行代理店の添乗員勤務を経て、3人の子供を育てた。家族の健康状態をうかがい知るのと同じように、果実の具合を観察し微妙な変化を読み取るのは得意だ。

果実へ注げるだけの愛情は注ぎ、分からないことは専門の指導員に遠慮なく訊ねる。専門家の持つ知識・技術を実践的に検証し活かしていく姿勢が、優秀な農家である彼女らしさを表している。

ブラッドオレンジの生産者 田中保次さん 愛媛県宇和島市

田中保次さん

栽培技術の模索と販売としての期待

実は「ブラッドオレンジ」の栽培技術は、いまだ確立されていない部分が多い。
とくにタロッコについては、濃厚な赤みを発色させ糖度を高めるためのメカニズムが解明できていないという(2012年3月現在)。
愛媛県宇和島市のみかん研究所が10年の研究を重ねるもなお栽培技術が未確立という事実は、それだけこのかんきつが「難しい」ということの裏付けになるかもしれない。

「(ブラッドオレンジは)都市圏での高級フルーツジュースやカクテル材料として需要が見込める」と話すのは、奥南地区の田中保次さん。210アールの園地のうち、今年実を結ぶタロッコは10アールだが、2年前から色づきの良さが特徴である「モロ」を10アール、苗木にして100本を改植した。将来的にはブラッドオレンジだけで20アール、総出荷量10トンをめざす。

皮は手でむくのに不向き。カットフルーツやフレッシュジュース、加工材料としての利用に向く。ジュースというと「ハネ・傷モノ」のイメージを抱きがちだが、搾りたてのおいしいジュースは、極上の味と希少価値とがあいまって、コップ一杯で1,000円を下らない。

ブラッドオレンジの生産者 児玉恵さん 愛媛県宇和島市

児玉恵さん

挑むのは都市圏、地域発の高級果実

地球規模での温暖化によって、本国・イタリア以上にブラッドオレンジ栽培に適するとされる好条件を手に入れた愛媛県南予地方。地域全体で290人以上が作るブラッドオレンジの栽培面積は18ヘクタールにのぼるが、結実している面積はわずか8ヘクタールに過ぎない。

JAブラッドオレンジ栽培の部会長を務める愛媛県宇和島市の児玉恵さんもまた加工分野でのブラッドオレンジ需要に大きな期待を寄せる生産者の一人だ。

自身は25アールでタロッコを栽培して8年目。今年の出来栄えは「過去最高」と太鼓判を押す。
県内外の加工業者からもすでに問合わせが相次いでおり、生果だけでなく菓子原料や香料など加工分野での利用幅は広がりをみせている。

「一時期の話題にしたくない」。児玉さんは強調する。「せとか」「デコポン」以上に今大きな注目を集めるブラッドオレンジの一大産地をめざす挑戦は、まだ始まったばかりだ。